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研究論文のタイトルにおける頭文字の大文字化(キャピタリゼーション)の規定

原稿のタイトル(title of your manuscript)で、どの単語の頭文字を大文字化するべきか戸惑った経験はありませんか? タイトルの文頭の単語の頭文字のみが大文字されている場合(これを「センテンスケース(sentence case)」と呼びます)と、タイトル内の全単語の頭文字のアルファベットが大文字化されている場合(これを「タイトルケース(title case)」と呼びます)と、そして両方を混ぜ合わせたような場合を見たことがあると思います。いったい、そこには一般的に定められた規定があるのでしょうか。

その答えは、一般的な大文字化の規定はありません。でも、複数の文書スタイルに沿った大文字化のガイドラインがありますし、投稿を希望しているジャーナルからも投稿前に(投稿規定/author instructions)の箇所で、どの文書スタイルに沿って欲しいか案内がある筈です。原稿や参考文献リストのフォーマットをAPAやMLAのフォーマット規定に従うのと同様、タイトル、ヘッディング(headings)、サブヘッディング(subheadings)の大文字化もそれぞれのスタイルガイドに従う必要があります。そこで今回は、一般的に頭文字を大文字化する単語の種類の説明を先ず行い(例えば、名詞、冠詞、接続詞)、その後でAPAとMLAスタイルガイドに注目して、これらの一般的規定から外れた幾つかの具体例をご紹介します。

タイトルの大文字化する単語を知っていると、論文全体の言語の質を高めることが出来ます。

 

タイトルの中で大文字化するもの

多くのスタイルガイドによると、書籍や記事のタイトル内の固有名詞(proper nouns)、代名詞(pronouns)、動詞(verbs)、形容詞(adjectives)、副詞(adverbs)の頭文字のアルファベットは大文字化するとあります。しかしながら、冠詞(articles)のようにタイトル内で大文字化しない単語もあります(タイトルが冠詞で始まる場合は例外です)。その他にも、スタイルガイドによっては、接続詞(conjunctions)は大文字化する場合も、しない場合もあります。下記では、筆者が必要に応じて様々なスタイルガイドに簡単に適応出来るように、タイトルの一般的な規定を説明します。

名詞(nouns)と代名詞(pronouns)の大文字化

名詞(人物、団体、場所の正式名を含む)と代名詞に関しては、全てのスタイルガイドがタイトルケースにそって大文字化する事に同意しています。

不正解 正解
Harry Potter and the chamber of secrets Harry Potter and the Chamber of Secrets
For whom the bell Tolls For Whom the Bell Tolls

冠詞(articles)の大文字化

冠詞の規定に関しても、ほぼ全部のスタイルガイドが、タイトル内では、最初と時には最後に置かない限り、冠詞は大文字化するべきではないと同意しています。

不正解 正解
Harry Potter and The Chamber of Secrets Harry Potter and the Chamber of Secrets
the Lord of the Rings The Lord of the Rings

ここでは、最初の例文の“the”はタイトル文中で使用されている冠詞の為小文字ですが、後者の例文ではタイトルが“the”から始まる為大文字化されます。この規則は下記のようなサブタイトルにも当てはまります。

不正解 正解
The Development of the European Union: a History of Integration The Development of the European Union: A History of Integration

接続詞(conjunctions)の大文字化

接続詞の大文字化に関しては、接続詞を大文字化するべきか、またどの接続詞を大文字化するべきかなどの規定がスタイルガイドによって異なる為、やや複雑です。あるスタイルガイドでは、3文字以下の接続詞は小文字で表記、それ以上の文字数の接続詞の頭文字アルファベットは大文字化で表記すると記述されています。また、別のスタイルガイドでは接続詞は全て小文字表記をすることと規定されていたり、“yet”、“so”、“as”など特定の接続詞は例外とするなどと規定されている場合もあります。その為、投稿前に必ず投稿先のジャーナルの具体的な規定を調べる必要があります。後ほど記述するAPAとMLAスタイルの詳細規定をご参照下さい。先ずは非常に一般的な下記の例をご覧ください。

不正解 正解
The Lord Of the Rings The Lord of the Rings
Harry Potter And The Chamber of Secrets Harry Potter and The Chamber of Secrets

前置詞(prepositions)の大文字化

前置詞の大文字化の規定も接続詞と同様に非常に曖昧であり、スタイルガイドによって異なります。4文字以上の前置詞は大文字化するとされているスタイルガイドもあれば、全ての前置詞は文字数に関係なく小文字表記にするスタイルガイドもあります。例えばシカゴ・マニュアル・オブ・スタイル(Chicago Manual of Style)によると、大文字化はタイトル内で前置詞がどのように使われているか、そして真に前置詞の機能を果たしているかによるとあります。この規則に従うと、前置詞が、前置詞句(prepositional phrases)の中で、副詞的や形容詞的な役割として使用されている場合は大文字化する、 (例えば“How to Back Up a Computer”)、そうでなければ大文字化しないという事です。

形容詞(adjectives)と副詞(adverbs)の大文字化

形容詞と副詞は、名詞と同様にどのスタイルガイドをみても大文字化する為、問題ありません。

不正解 正解
Stephen King wrote The long Walk in 1979. Stephen King wrote The Long Walk in 1979.
The Art of Thinking clearly, by Swiss writer Rolf Dobelli, describes the most common thinking errors, ranging from cognitive biases to social distortions. The Art of Thinking Clearly, by Swiss writer Rolf Dobelli, describes the most common thinking errors, ranging from cognitive biases to social distortions.

動詞(verbs)の大文字化

動詞も、全てのスタイルガイドで大文字化になるので、これも簡単なケースです。

不正確 正確
The World as I see It is a book by Albert Einstein. The World as I See It is a book by Albert Einstein.

スタイルガイドによるタイトルケースの規定

APAタイトルケース

APA(American Psychological Association)スタイルは行動科学や社会科学の学術文で最も一般的に使われるスタイルです。下記の記述はAPAガイドラインによるタイトルの大文字化規定の一部です。

大文字化する(Capitalize) – タイトルやヘッディング(サブタイトルやサブヘッディングも同様)の文頭単語の頭文字
– 全ての名詞、動詞、形容詞、副詞、代名詞–ハイフンで繋げられた後部の単語も含む(例えば、Self-relianceではなく、Self-Relianceとする)
– 4文字以上を含む他の全単語
大文字化しない
(Do NOT Capitalize)
– 複合修飾語内のハイフンで繋げられた後部の接頭辞(prefix)
(例えば、 Mid-morningやAnti-inflammatoryなど)
 

MLAタイトルケース

主にリベラルアーツや人文学系の学術書や引用の情報源に使われるMLA(The Modern Language Association)のハンドブックによるタイトルやヘッダーの大文字化規定は下記の通りです。

大文字化する(Capitalize) – タイトルやヘッディング(サブタイトルやサブヘッディングも同様)の文頭単語の頭文字
– 全ての名詞、動詞、形容詞、副詞、代名詞 
(ここでもハイフンで繋げられた後部の単語も大文字化)
大文字化しない
(Do NOT Capitalize)
– 冠詞と前置詞(文字数に関係なく)
– 等位接続詞(coordinating conjunction)
(例: for, and, nor, but, or, yet, so)
– 複合修飾語内のハイフンで繋げられた後部の接頭辞(prefix)
不定詞(infinitives)として使う“to”
(例: “How to Achieve Global Prosperity”)

タイトルの大文字化の追加規定

何度も言うようですが、投稿先のジャーナルから指示される具体的な投稿規定や、ジャーナルから指定されるスタイルガイドの規定を確認することが非常に重要なのです。ただ、それらの規定が一致しない場合は、常にスタイルガイドよりもジャーナルの規定を優先するべきです。最も一般的なスタイルガイドであるAPAとMLAを上記で説明しましたが、この他にも独自の規定を持つスタイルガイドがあります。それらは、the Chicago Manual of Style, the American Medical Association (AMA) Manual of Style, the Associated Press Stylebook, そして、元々はAP通信記者用のガイドブックとして発展しましたが現在ではジャーナリズム分野で広く使われているan American English grammar style and usage guideです。Wikipedia記事のタイトル大文字化の規則(the capitalization of titles of Wikipedia articles)さえあります!

追加情報として、これらのスタイルガイドでの記述は不要な大文字化規定かもしれませんが、学問/科学分野に関連して、生物の種名がラテン語表記されている場合は、名前の2つ目の部分は小文字表記になります。たとえ、タイトルの他の部分がタイトルケース規定に従っている場合もです。

不正解 正解
Novel Alkaloids from Portulaca Oleracea and Their Anti-inflammatory Effects Novel Alkaloids from Portulaca oleracea and Their Anti-inflammatory Effects

研究実験に関する記述で覚えておきたいもう一つの大文字化規定として、タイトルケースでは、スペルアウトされた数字や分数字は全て大文字化するという事です。

不正解 正解
The Beck Depression Inventory: Twenty-five Years of Evaluation The Beck Depression Inventory: Twenty-Five Years of Evaluation

最後に、個人的な好みがどうであれ、引用する書籍や記事のタイトルはオリジナル文書のオリジナルバージョンの通りに表記すること。たとえそれが一般的な大文字化規則に当てはまっていないとしてもです。

プロの編集サービスと共にあなたのタイトルの正しい大文字化を

タイトルの大文字化がますます不明になってしまったり、投稿先のジャーナルの投稿規定に困惑してしまっている方(そういう事もあります。なぜなら、これらの規定は長期間をかけて組織化されてしまい、その結果、一貫性に欠けてしまう場合があるからです)、ワードバイスの編集サービス(Wordvice editing services)が役立ちます。プロの学術文編集者が細かい部分の不明点や問題を解決して、投稿前に、あなたの原稿が正しいフォーマットで記述されている事を確認します。更に、タイトルのみではなく原稿の他の箇所も完璧に執筆したいと希望するなら、多数のリソースが詰まったワードバイス アカデミック リソース ウエブサイト(Wordvice academic resources website)をご覧ください。

 

引用元:ワードバイス公式ホームページ